『もずやと学ぶ日本の伝統織物』第17話
【ホームスパン】
これは毛織物です。
○主に岩手県で生産されている
○良い物になったのは昭和9年以降
①原糸は、現在外国からの輸入原毛の他、小岩井農場製も使っている
②洗剤で羊毛をよく洗う
③羊毛のまま植物染料で染色する
④つむぎ車を分で糸をつくる
⑤手機で織る
という感じですが、んーという感じですね。
というのは、毛織物の品質に大きく影響する加工工程に関する記述が全くないからです。
ツィード系という事なので、そんなに複雑な加工はないと想うのですが、羊毛を毛の状態で染めて糸にして織る。
というだけじゃ、何がどう良いのか解らないですよね。
毛織物には染色のタイミングで三種類に分かれます。
このホームスパンのように毛の状態で染めるのをトップ・ダイド。
糸の状態で染めるのをヤーン・ダイド。
白生地の状態で染めるのをピース・ダイド。
といいます。
トップつまり毛の状態で染めると、マーブル上のかすれ感のある織物ができることになります。
ここでは植物染料を使う、となっていますが、植物染料を使うと縮絨がしにくくなります。
というのは縮絨には石けんを使うので、染料が溶解して流れ出してしまうからです。
私は自分のジャケットでハリス・ツィードというのを持っていますが、確かに風合いはガサガサです。
独特の味わい深い織物ですが、ミルド物ではないですね。
ということは、洗って、幅だし、乾燥して、蒸す。
そのくらいの簡単な加工工程だと想います。
それにしても、トップで染めて、カードにかけて服地一反分の糸を紡ぐのは大変だと想います。
糸は撚らなければなりませんし、洋服地となると幅も広く引き通しも大変です。
織るのは簡単ですけどね。
私が勤めていた当時の鐘紡でも、まだ見本は手織りでした。
マス見本という先染(ヤーン・ダイド)の見本は二人がかりでヒを投げあって織っていたと記憶しています。
当時、もうほとんど紡毛織物は無かったのですが、たまに受注すると加工工程も短いし、戻しになりにくいので楽だったように想います。
毛織物には梳毛と紡毛というのがあって、普通のビジネススーツに使われるような感じのを梳毛織物、オーバーやツィードのジャケットのような感じのを紡毛織物と言います。
羊のどの部分の毛なのかによって違うのですが、それは自分で調べてくださいね。
また、縮絨をするかどうかによっても分かれます。
縮絨をしないものをクリア物、するものをミルド物といいます。
ミルド物の代表的なのがフラノ、サキソニー。
クリア物は、サージ、ギャバ、トロピカル、等々です。
組織や糸使いによっておもしろい名付けがされています。
絹、麻、芭蕉もおもしろいですが、羊毛もおもしろいんですよ。
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