オオサカジン

  | 羽曳野市

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2011年06月18日

『逆選択』の理論

経済学において『逆選択の理論』というのがあります。

ウィキペディアでは『逆選抜』として紹介されています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/逆選抜

概要
情報の非対称性が存在する状況では、情報優位者(保持している情報量が多い取引主体)は情報劣位者(保持している情報量が少ない取引主体)の無知につけ込み、粗悪な財やサービスを良質な財やサービスと称して提供したり、都合の悪い情報を隠して保険サービスなどの提供を受けようとするインセンティブが働く。そのため、情報劣位者はその財やサービスに対して、本来の価値より過度に悲観的な予想を抱くことになり、もし情報の非対称性が無ければ売買が行われていたはずの取引の一部が行われなくなる。そして、市場で取引されるものは、悲観的な予想に見合った粗悪な財やサービスばかりとなる。これを、通常は良いものが選ばれ生き残るという『選抜』、『淘汰』の逆であるという意味で、逆選抜、逆淘汰と呼ぶ。
いま、ある中古車の売り手と買い手を考える。買い手は、中古車情報誌などから、買いたい中古車の価値はジャンク(20万円)から掘り出し物(100万円)までの間に一様に分布していることだけを知っている。一方で、売り手は本当の中古車の価値を知っているとする。この時、まず、買い手が自身にとっての価値の平均値である60万円を提示したとする。すると、もしこの中古車の本当の価値が60万円より高ければ、そのことを知っている売り手は取引をしないであろう。取引に応じるのは、本当の価値が60万円以下の時だけである。そうなると、買い手は相手が取引に応じるならば、中古車の価値は60万円以下であるということを知ることになるので、買い手にとって中古車の価値は20万円から60万円の間に分布することになる。そこで、買い手は新たな価値の平均値である40万円を提示しなおすとする。すると上記と同様の流れにより、買い手が取引に応じるのは本当の価値が40万円以下の時だけであろう。以下同様に繰り返していくと、最終的には中古車の価値が20万円というジャンクの場合にしか取引は成立しないこととなる。その結果、中古車市場での取引は閑散としたものとなり唯一取引されるものはジャンクのみ、となってしまうのである。
なお、上記の例において、買い手と売り手の両者が本当の価値を知っている場合のみならず、両者が本当の価値がよく分からずに20万円から100万円の間に一様に分布していると考えている場合においても、ジャンク以外の中古車の取引が行われる。どちらの場合も情報の非対称性の問題が起きていないからである。


簡単に言えば、『悪貨は良貨を駆逐する』という事ですね。

何が言いたいのか解りますね?

つまり、高価な本物と廉価な模造品・粗悪品は共存し得ないということです。

そして、市場原理に任せている限り、必ず良貨は駆逐され、悪貨がはびこるのです。

『模造品は模造品とはっきりと言わない限り、粗悪品は本物より品質面では劣ると言わない限り、必ず本物を呑み込んでしまう』のです。

和装業界の場合、消費者がいだく『着物の価格への不信感』が逆手に取られて、購買価格が下へ下へと引きずられて、結局は高価な本物が売れなくなってしまうということです。

理論がそのまま、現実になっています。

よく『本物だけは残るのでしょうね』という消費者の声を聞きますが、全く逆です。

いままで、本物が残ってきたのは、その値打ちがわかるパトロンが居たからです。

この『逆選択の理論』では情報の非対称性、つまり売り手と買い手の情報量の差が原因だということになっていますが、

和装業界では、売り手も『本物は高い』という事しか知らない、というのが現実だと思います。

芭蕉布や宮古上布がどれだけ堅牢で涼しいのか、琉球びんがたがいかに華やかで着用する人を元気づけるのか。

どれだけの売り手が解っているでしょうか。

琉球びんがた(俗に言う本紅型)と和染め紅型、あるいは、ただの友禅紅型やプリントの紅型を見て、一発で見分けられる業界人が

どれだけいるでしょうか。ということは、情報の非対称性は生産者対売り手+買い手になっていて、逆選択は流通段階から起こっている

ということになります。

そして逆選択解消の方法として、次の方法が挙げられています。
?第三者の介入・・・格付け機関、ディーラー、情報誌などで非対称性を解消する
?シグナリング・・・情報を持って居る主体が自ら情報を伝えようとする
?標準化・・・店の信用を高める
?スクリーニング・・・情報開示を仕向ける
?政府の規制

基本的には情報の非対称性を解消する事を目標としていますが、ところがどっこい、みんなグルなのです。

生産者自体も、産地という大きなくくりでは模造品や粗造品を造っているので、自分では声を挙げられない。挙げれば自分で自分の
首を絞めることになる。問屋はもちろん、売りやすい商品を作ってもらおうと産地に働きかけるから、良い物より、売りやすい物を求める。その手先の情報誌やディーラーはもっと本当の事を言うはずがない。政府の規制も、産地の代表や問屋・小売店などの業界関係者からヒアリングして聞くわけですから、真相の掴みようがない・・・今回の原発事故のようなものですね。

沖縄でも、結局声を挙げ、不正を糾弾するのは、本物だけを真面目に造っている産地や作家さんだけです。

つまり、正直者がバカを見る、そんなとてつもなく情けない状態になっているわけですね。

でも、産地の人はみんな本当の事は解っているんです。

でも、その結末を想像する能力も知識もない。

結城紬なんかも、一般に結城紬として売られているのは、高機の物でしょう?

いざり機のは、『本結城』と言われて売られている。

でも、なんでいざり機を使うかというと、糸が細くていざり出ないと切れてしまうのと、それでないと独特の風合いが出ないからでしょう。

じゃ、結城紬っていうのは何かというと、経緯真綿紬で結城地方で織られた物であればいいのかといえばそんなことはまったく間違っている訳です。

やっぱり、『重要無形文化財』に指定された技術と技法で造られた物でなければ結城紬とは言えないし、結城紬というのは

そのイメージがあるから、人気があるのでしょう。

芭蕉布だってそうでしょう。平良敏子さんという大スターがいて、芭蕉布が希少性が高くて、あこがれるから、欲しいと思う人が居るわけで、だから、偽物を掴まされる人が後を絶たない。

偽物を掴まされている例は沢山知っていますが、業者の立場で言うと、偽物を安く売ったほうが本物を高く売るより利益率ベースでは儲かります。

ですから、どんどん偽物が蔓延する。

そしておかしな事があるのです。

弊社の場合、ほとんど仕入は作家かメーカー直です。

ですから、偽物を仕入れるということはあり得ません。でも、他のどこよりも安く適品を仕入れることができます。

しかし、作品と値段を提示すると『あぁ、これは○○みたいね』とか『○○の作品に似てるわね』最悪の場合は『安すぎるから偽物でしょう』と言われる事もあるのです。

ギョエー!としか言いようがありませんが、安いと警戒されるというのも真実なのです。

逆選択とモラルハザードが渾然一体となった、まるでブラックバスとブルーギルが水槽の中で泳いでいるような状況?ですが、

『ほな、どないしたらええんでっか?』ということです。

なぜ、こういう状況になってしまったかといえば、昔は家と呉服屋というのは信用という絆で繋がっていたわけです。

呉服屋のご主人は、おばあちゃん、おかあさん、むすめさん、それぞれ家族みんな生まれた頃から知っていて、

産着からお世話をした。その街中、村中が、その呉服屋を信用して持ちつ持たれつの関係を保っていた。

それが、前述したNCの拡大や地元商店街の崩壊などで、消滅した。

つまり、家と呉服屋の絆が断ち切られたのです。(他の商店も同じです)

みなさんとくに30台、40台若い方は自分の購買行動を振り返ってみてください。

あちこちのお店の店頭や、展示会を見て、品物と値段を見て回っているでしょう。

それで、購買に至るのはどんな時ですか?

私の知っている範囲では、Aの店で1つ、Bの店で1つ、そしてCの店で1つ・・・

それが、その店の信用を土台として決めているのなら、なんの問題も無いのです。

もし、それがたまたま行ったお店で、たまたま気に入った物が、たまたま買える値段で、たまたま懐具合が良かった・・・

だから、買った。

プロから見たら、飛んで火に入る夏の虫です。

私の場合は外販=訪問販売という非常に売り手にとって不利な立場の販売形態を取っています。

なぜ不利かというと、訪問販売にはクーリングオフなど、圧倒的に買い手に有利な法制度が敷かれているからです。

それが成り立つのは、基本的にはデパートの外商のお客様だからです。

しかし、それでも、お客様は、じっくりと私の事を観察されています。

もちろん、一番は外商さんとの信頼関係ですが、いかに外商さんが優秀でも、私が嫌われたり、信用されなかったりすれば、

商談は成り立ちません。

そして、基本的には私達はお客様に『ご無理を承知でお願いにあがっている』のです。

ですから、万が一にも信用を失墜することがあれば、とんでもない事態に発展してしまいます。

まさに板子一枚の上で、日々の商いを重ねさせて頂いているということです。

つまり、何が言いたいのかというと、『良い買い物がしたければ、信頼できる店と販売員を見つけなさい』と言うことです。

実際の販売においては、商品知識というのはあまり必要ありません。

商品知識や教養は呉服の商売に必要なのものですが、販売=売約決定の為にはさほど必要ない。

売るためには、ポイントを連呼すれば、それが一番効果的だからです。

私が、あれこれ蘊蓄を披露するのは、売るためじゃないのです。

みなさんに、情報を得て頂き、興味を持って頂くためなのです。

ほんとうに、商売に入ったら、私は沈黙します。(これ以降は企業秘密(^_^)v)

信用出来る店と人をどうやって知るかといえば、教えてもらうようなフリをしてあれこれと質問してみることです。

そして、その商品に対して、きちんと負の面も知っていて、教えてくれる人。

残念な事に、知識と販売力は正比例しません。

しかし、販売力とお客様の便益も正比例しない。知識・教養はお客様の便益となります。

情報の非対称性を解消し、逆選択の流れを阻止するためには、消費者の方々の協力無くしてはありません。

呉服屋に言ったら、自分の知識を離すことよりも、日頃疑問に思っている事をあちこちで話して聞き比べてみてください。

きちんと熱心に答えてくれたところが、信頼できる呉服店の候補でしょう。

消費者のみなさんの素敵なお買い物も、私達の仕事も、信用がすべての基礎。

そしてローマは1日にしてならず、です。
Posted by 渡辺幻門 at 00:13│Comments(0)
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