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  | 羽曳野市

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2013年05月21日

布をどう見るか

ものづくりする人の話ばかりしている、このブログですが、たまには着用なさる方に参考になる話を。

テーマは『布の見方』です。

よい布が生まれてくるには、その価値を解る人がいることが必須の条件となります。

だれもよいと思わない物は、作り手がどんなに想いを込めて造っても、いずれは無くなります。

ニーズとかウォンツとか、こざかしい事言わなくても、来てくださる人、使ってくださる人の満足を得られるかどうかがポイントです。

でも、満足することを知らなければ、そんなもん、で終わってしまいます。

スーパーブランドのバッグや時計。

どこがどう良いのか説明できますか?

出来ないとすれば、良いとも思っていない高価な物を、なぜ購入するのでしょうか?

ブランドへの信頼、高級なイメージ、みんな持っているからという競争意識・・・

商売人である私が、こんな事言うのもおかしな話ですが、要は『買わされている』わけです。

モノに満足しているのではなくて、所有している自分への満足なのかも知れません。

それはそれで良いのですよ。それも買い物の大きな楽しみであり魅力です。

でも、ここでお話しするのは、『そういう事に惑わされずに、いかにしてホンモノを見いだすか。真価を認めるか』という事です。

最近は展示会においでになったお客様の中には、とても産地や作家に詳しい方がいらっしゃいます。

今は情報がたくさんありますから、興味をもってよく勉強なさっているんだと思います。

でも、モノが解るようになろうとするには訓練が必要で、この『知識』というのがその邪魔になります。

モノの良さは本物か偽物かでもないし、製造方法でもないし、産地で決まるモノでもない。

すべての邪念をとっぱらって、その布と対峙する。そこから始まります。

もちろん、値段なんて見てはいけません。

モノそれ自体の判断・評価は作り手にかないません。

前にお話ししたと思いますが、作り手がその気になれば私達商人なんて簡単に騙されてしまいます。

そういう意味で私達商人も、着られるお客様も謙虚でなければならないと思います。

では、何を見るのか?

お客様なら、まずは『好きか嫌いか』『自分に合うかどうか』

なーんだ!そんなこと!

そう思われるでしょう。

でも、これが一番大事なんです。

どんな良いモノでも嫌いなモノ、自分に合わない物は、長く愛用頂けません。

実は、自分の好きなモノ、自分に合うモノがバッチリ把握できている人というのはそんなに多くありません。

使う人がモノを観るときは自己中でいいのです。

まず、自分の中にスコンと入ってくるモノを見分ける。ここからスタートです。

選び出すためには、ブランドも証紙も産地も値札も一切見ない、聞かない。

私が対応させていただいたお客様はお分かりになるかも知れませんが、お客様がジッと作品に見入っていらっしゃるとき、私はほとんど言葉を発しません。ポツリ、ポツリとお客様の心を読みながらお話しする程度です。

なぜそうするか、といえば、作品の良さをじっくりと味わって、納得して買って頂くためです。

『自分にとって良いモノ』を選び出した後は、とにかくひたすらジックリ見る。

心にストンと落ちるまで、そうですね30分は見て良いと思います。

選び出すのに10分。ジックリ見るのに30分以上かける。

30分見れば、飽きるモノは飽きます。

良いモノは、どんどん作品に引き込まれていきます。

私は商品を買い取るので、毎日毎日、同じ商品を見ています。

いつ見ても良いなぁ、飽きないなぁ、というモノに囲まれていないと精神に異常をきたすのです。

そして、『うん、この作品なら仲良くできるかも』と想い、値段がお財布と折り合えば、お求めになれば良いのです。

販売員の話は何をきけばいいのか、と言えば、TPOです。

それ以外は聞く必要がありません。

どんなして造ったとか、誰が造ったとか、人間国宝だとか、へったくれだとかは、要らぬ世話です。

そして、仕立ててもらって実際に着てみる。

できれば、買ってからは集中的に着てみる。紬類なら特に何度も。

その結果として、『買って良かったわ』なのか『高い買い物だったわ』なのか『失敗したわ』なのか、いろんな気持ちが起きます。

それを積み重ねて行けばいいのです。

お若い方や初心者の方は初めからそんなに高いモノを買えないかも知れません。

今はリサイクルとかもあるので、上質のモノが元値の数十分の一の値段で買えるかもしれません。

実は私達とリサイクル業者はつながりが全くないので、どんな商品が売られているのか知らないのですが、良いモノが出ているとしたら、利用する価値はあると思います。

新品でも機械織のペラペラの紬と、リサイクルの本物の結城紬と、どちらが布を知る上で役立つかといえば、後者だと思います。

リサイクルがどうのこうのというのは、それは別の価値観の問題ですので、ここではお話しません。

売られているリサイクルがお嫌なら、お婆さま、お母様、ご親戚から良い紬を頂いたら、それを『着倒す』ことです。

もらった物なら、好き嫌いを言わず、着倒す。

できれば、私みたいに、単衣にして、寝間着のように、普段から着て、寝転んだり、昼寝したり、酒を飲んだりする。

女性なら、家事をする、体操をする、散歩をする・・・

着物原理主義でなく、そうすることで、良い布というものはどういう物なのかが解ります。

軽く、強く、温かく、汚れず、シワにならず、着やすい・・・人間の粗相や身勝手を吸収してくれる布、これが私に取って良い布です。

『用の美』って聞いたことがあると思います。

用の美の意味というのはいろんなとらえ方がされていますが、『実用に即した物はそれ自体が美を生み出す』という事だと私は理解しています。

つまり、着るの適した布は美しいという事なんです。

どんなに色鮮やかに美しく染色されているようでも、生地がボロで染めが甘ければ、じっと見るだけで見破れます。

どこが違うのか・・・落ち着きというか、安心感がない。なにかザワザワしたものを感じるんです。

身の詰まった新鮮な魚を見れば味見しなくても唾液が出てきますよね。

でも、シナシナの痩せた魚をみれば、一見してまずそうに見える。

そう、『健康さ』が無いものに良いモノは無いんです。

人間でも、美しい人は健康そうですよね。

逆に健康な人は、それだけで美しい。

そういうもんなんです。

健康で美しい人と一緒にいれば、自分も朗らかになって健康になります。

布も同じです。

色白、色黒、マッチョ、やせ形、お好みは色々あるでしょうけど、健康そうなのが良いのです。

人間でも、ペットでも、健康かどうか様子や顔色でわかりますよね。

その感覚で見ればいいのだろうと思います。

逆にね、実力があるのに、健康そうな布が作れない人は、作り手が健康でないか、わだかまりがあるという事なんです。

それを解くのが私の仕事でもあるわけですね。

心がウキウキ、楽しく仕事してないと、健康な布はつくれません。

へんな布が上がってきたら、『なんか心配事でもあるんか?』って電話したりします。

あと、直感として『美味しそうな』のを選ぶと間違いないです。

魚でも身が締まって脂ののったのは、美味しそうですよね。

美味しそうでないのは、痩せていたり、脂がなかったり、身がズルズル。

美味しそうな魚を食べて、食中毒になることはありません(アレルギーは別です)


あとは、やっぱり経験です。

良い買い物をするにはそれなりの投資も必要です。

あれこれと産地別ブランド別に揃えるのも楽しいでしょうけど、『良い布と暮らす』ためには、上に書いたような事も最短コースのひとつじゃないかと思います。

あくまで、ひとつの参考ですが。








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Posted by 渡辺幻門 at 14:02│Comments(0)迷作選
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