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2011年08月09日

もずやと学ぶ染織マーケティング<第26回目>

8−3 戦略グループ

ここでは、主に製品の『幅と深さ』によって異なるマーケティング戦略が採られるということが書かれていますね。毎度の事ながら、和装業界に置き換えて考えてみましょう。

幅が広いというのは着物で言えば、留袖から訪問着、小紋、紬、各産地の作家物などがまんべんなく扱われているという事です。

逆に深さが深いというのは、おしゃれ専門とか紬専門とか、弊社のように沖縄専門とかそういうアイテムを絞って、そこに集中的に品揃えを特化していることを言います。

家電に関してはテキストよりももっとわかりやすい例があって、パナソニック東芝の存在に対して、タイガーは炊飯器専門、象印はポット専門という事があるわけです。

ほんとうは、オールラウンドの会社と専門性を持った会社が混在しているというのが消費者にとってはいいのだと想うのですが、問題は大資本による販売チャネルの寡占化です。

和装業界で言えば、NCの存在や催事販売です。

つまり、大きな会場にたくさんのお客さんを連れ込んで、販売するという形態を採るわけですが、そうなると、当然、その会場内に大きなスペースを取った所が販売額が大きくなる傾向があるわけです。お客様も、実は販売員も商品の事はあまり解っていないし、そんなにじっくりと吟味する時間もないわけですから、とりあえず数打ちゃあたるように幅広く品揃えをするようになる。そうなると次第に小売りの側は問屋に品揃えを丸投げしたくなる。イコール、なんでもある問屋に任せてしまう、あるいはそんなオールラウンドの問屋2〜3社に絞って品揃えするということになってしまいがちです。

専門というのはその部門に特別に詳しいことをいうのですから、何から何まで専門ということは本来あり得ない。弁護士なら民事なのか刑事なのかがあるでしょうし、コンサルタントでも財務なのか販売なのかで専門は違うわけです。

着物というのは本当は非常に範囲が広くて、とくに沖縄の物を語り始めると1日かかってもまだ足りないという位ですから、かなりの専門性が必要なわけです。もちろん、品物を見定める眼を養うのは知識を得るよりさらに時間と研鑽が必要です。

他も同じような事で、奥深く品揃えをする問屋はどんどん総合問屋に押されていくし、販路を奪われるというという事が現実に起こっていて、そうなると、いくら作家が工夫しても、知名度と値段だけでしか判断されないという事になってしまいます。

タイガーがゲコ亭(堺にあるめちゃめちゃ美味しいご飯を食べさせる一膳飯屋)並のご飯が炊ける炊飯器を開発したとしても、それを置いてくれる販売店が無くなっていくというような事です。

たとえば、芭蕉布が欲しいというお客様がおられたとします。総合展示の場合には芭蕉布がそんなにたくさんある事は少ない。2〜3点の中から選ばなければならない。当然お客様は迷われます。売り手が芭蕉布の善し悪しについてきちんとした見識を持っていなければ、勧めようがないわけです。ほとんどの売り手にとっては柄が違うだけでどれも同じ芭蕉布としかうつらない。せいぜい柄が好きだ嫌いだの範囲です。私なら、糸質、糸の色、新作か定番か、そのお客様から聞いたタンスの中身を総合して最適な1点を選び出します。それが専門というもので、高度な手工芸品については同じような高度な知識がないと本来勧めることができないのです。

しかし、その機会が失われています。それは、総合問屋が適当に集めた物を押しつけられるという構造を意味しているのです。この流れは残念ながら止めることが出来ないと想います。

なぜかというと、専門問屋の側にそこまで深く考えて品揃えしようとする所が減ったこと、それを求める小売店もそれ異常に減っていること、そして何より物をきちんと見て仕入れ・販売し、消費者も物を見ないでラベルだけを見て、感覚だけで選ぶ傾向が非常に強まっていることがあげられます。


では、造る側としてはどう対応していけばいいのか、ということです。
幅に対応するのか、深さに対応するのか。
それは、作り手自身が決めることです。
久米島紬ならば代表的な柄や色で作り続けたいと思うなら、幅で勝負する所がいいでしょうし、こだわった品質や色、あたらしい技法を取り入れたいとか考えるなら深さで勝負する事もできるでしょう。

幅で勝負するときは、相手が物の価値が解らない場合が多いわけですから、どんなに良い作品を造っても認めてもらえないという事があります。いわば一山なんぼ、の商売です。

深さで勝負するところは、一つ一つ吟味して仕入れするので、価値は比較的解ってもらえるでしょうし、高く買ってもらえることもあるでしょう。

どちらを取るかは、自身のスタイルと覚悟によりますね。

ただ、どちらも、というのはもう無理だと想いますよ。

私なら、なんでも屋に出している人とは言い悪いじゃなくて、目指すところが違うと想いますし、私の想いに対応してもらうには、それなりの技量と根性が必要だと想うからです。

ですから、作り手は、取ってくれた問屋がそこからどこに出すのかにもっと関心を持つべきだと想います。

それは、このテキストに書かれているように幅か深さかによって取られる戦略が違う=あなたの作品の扱われ方が違うからです。

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